アレルギー
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近年アレルギーで悩んでおられる方が多くなっています。
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花粉症を筆頭に、様々な食物アレルギー、シックハウスのような化学物質アレルギーなど多岐にわたっています。
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一種の文明病とも言われており、社会が成熟すればするほど、ある意味での拒絶反応が起きているのかもしれません。
近年なぜ花粉症が多くなっているのでしょう?
新生児・乳幼児に虫歯の細菌を感染させないためには、母親や近親者の唾液が子供に触れないようなスキンシップが大切と言われています。
すなわち、離乳食が始まる頃から、食器やスプーンを介して、両親・兄弟姉妹や近親者から感染するということです。
一方、この間世界中でアレルギー体質の人が多くなったことを受けて、様々な研究や疫学調査が行われています。
40年程前までは、日本ではその存在すら知られていなかった「スギ花粉症」に代表されるアレルギーが、急激に増えた時代がありました。
昭和20年生まれの世代では40%程度だったのが、昭和30年生まれでは80%を越えました。
この変化の原因は「生活環境が変わったため」と言われています。
その生活環境とは?
その1
小児時代から牛小屋に入る頻度が高いほど、アレルギーになりにくい。
1才になるまで牛小屋に入る頻度が高い子供は、アレルギーになる確率が圧倒的に下がる。
その2
兄弟姉妹が多いほど、アレルギーになりにくい。
兄・姉が4人以上いる子供は、長男・長女に比べて、アレルギーになる確率が半減する。
これらの統計から原因を追及した結果、上記2条件の子供が家畜の大腸菌から放出されるエンドトキシンという物質に触れる頻度が高いということが分かってきました。
2種類の免疫
ほ乳類以前の生き物には1種類の免疫しかありませんが、ほ乳類は2種類の免疫を持っています。
①細菌型免疫(古い免疫) : 細菌に対する免疫
②IgE型免疫(新しい免疫) : ダニや寄生虫のような大きな生物に対する免疫
生まれたばかりの子供は、この2種類のどちらにも形を変えられる「未分化の免疫」を持っています。
成長しながら、体内に侵入してくる細菌やダニの成分に応じて、細菌型免疫を強化したり、IgE型免疫を強化したりして、バランスの良い免疫システムを獲得していきます。
問題になるのは2つの免疫システムのバランスで、IgE型免疫の割合が大きいほど、アレルギーになりやすい体質になってしまいます。
花粉アレルギーとは?
本来、花粉は人体に何ら影響を及ぼすものではありません。
しかし花粉に含まれる成分は、ダニの放出する酵素の成分によく似ています。
そのため、IgE免疫が花粉とダニを取り違え、無駄に炎症物質を出してしまうことから、花粉アレルギーは引き起こされます。
とはいえ、すべての人が花粉アレルギーになる訳ではありません。
アレルギーになりやすい人となりにくい人がいます。
すなわち、2種類の免疫のうちIgE免疫の割合が多い人ほど花粉アレルギーになりやすいのです。
どうすればIgE免疫の割合の少ない体質(アレルギーになりにくい体質)になれるのでしょう。
鍵はエンドトキシン
牛小屋や、年長の兄弟姉妹と触れ合う機会の多い子供ほどアレルギーになりにくいこと、
それはエンドトキシンに触れる機会が多いことを意味しています。
この物質は家畜の糞に多く含まれ、従って牛小屋では大量のエンドトキシンが空気中に存在している訳です。
また上の兄弟姉妹が外から持ち帰ってくるエンドトキシンに生後から接していることになります。
このエンドトキシンに触れることにより細菌型免疫が強化されます。
こうして細菌型免疫が強く鍛えられ、花粉アレルギーになりにくい体質が作られます。
結論としては、なるべく早い時期に細菌の洗礼を受けて、
エンドトキシンに触れることがアレルギーになりにくい体質を作るということです。
このようにエンドトキシンは、花粉アレルギー始め様々なアレルギーになりにくい体質を作るのですが、牛小屋にはエンドトキシンだけでなく、サルモネラ、O-157など、家畜を介して感染する病気の雑菌もたくさんあるので、過度の触れ合いには要注意です。
さらに、牛小屋のある環境、兄弟姉妹が多い環境がいつまでも続くとは限りません。
この子らの環境が変わった場合(学業のため、あるいは仕事のため都会で暮らすようになった場合)、果たして細菌型免疫とIgE型免疫のバランスに変化が起こらないのでしょうか?
この報告の続きがありました。
やはり、子供時代にアレルギーのなかった者でも、アレルギーになる確率が高くなるのです。
(一時期、回虫やサナダムシなどの寄生虫が減ったから花粉症が激増すると言う説が報道を賑わしたことがありましたが、現在は否定されているようです。)
親の唾液で児のアレルギー予防!?
親の唾液が児のアレルギー疾患予防に効果的?
顔をしかめたくなるような見出しかもしれませんが、スウェーデン・クイーンシルビア小児病棟小児アレルギー科の医師らが、親の唾液に含まれる細菌がアレルギー疾患発症予防に効果があるかについて検討したところ、「親の唾液を与えられた児では、18ヶ月後の喘息発症のリスクが9割、アトピー性皮膚炎発症のリスクで6割減少していた」という。
(Pediatrics 2013.05.06オンライン版)
さて、その簡単な投与方法とは?
もっと詳しくお知りになりたい方は、直接『メディカル・トリビューン』に!
https://medical-tribune.co.jp/mtpronews/1305/1305012.html
歯科界の常識である『虫歯菌の感染経路』を日常的に喧伝し注意を促してきた者として、この『アレルギー』のページを掲載することには逡巡がありました。
しかし近年ますます増加の一途をたどる『アレルギー疾患』、そして子供たちの健康を考えれば、知らんふりは出来ませんでした。
唾液により虫歯菌感染 ⇔ 唾液によりアレルギー予防 の矛盾 !
今後さらに明確なメカニズムと予防対策が構築されることを願っています。
さらに驚きです
最近、腸内フローラの話題で喧しいのですが、新しい知見では、新生児はなるべく早い時期から多種多様の細菌に暴露された方が腸内フローラが健全になるというものです。
いくら気をつけても、虫歯菌のストレプトコッカス・ミュータンスやラクトバチラスは、生後数ヶ月で両親や近親者から感染するようです。
しかし、感染すれば必ず虫歯ができるのではなく、その後の乳幼児の生活環境とりわけ食生活の影響の方が問題のようです。
親子の情愛を基本に考えれば、当然スキンシップも多くなります。
昔ながらの子育ての方が、健康のためにも情操を育むためにも理に叶っていると言えるのでしょうか。
ヒトメタゲノム解析や腸内フローラの研究に端を発して、口腔内フローラの研究も進み始めたようです(でもたった数年です)。